映画「靖国」関西でも公開始まる、混乱なし
上映中止問題で話題となった映画「靖国 YASUKUNI」の関西での公開が10日、大阪市淀川区の第七芸術劇場で始まった。午前9時半、11時55分からの2回上映で、いずれも満員となったが、特に混乱はなく、立ち見なども含めて計約380人が観賞した。
大阪府警の警察官やスタッフら約40人が警戒する中、午前7時前から客が並び始め、劇場は予定を約1時間早めて開場。9時過ぎには第1回分が満員になり、急きょ同じビルの中華料理店でプロジェクターを使ってDVD上映会も開いた。
劇場内では上映中も警察官がスクリーンの脇などに座り、客席に不審な動きがないか神経をとがらせた。
映画を見た京都市の同志社大3年、渡名喜美和さん(20)は「特に偏った内容だとは思わなかったが、今も靖国神社に高い関心を持つ人がこれだけ多くいることに驚いた。自分もよく考えたい」と話していた。同館では6月6日まで上映予定。
◇
◆内容は観客が判断を
第七芸術劇場支配人の松村厚さん(46)に聞いた。
上映を決めた際、全国から届いたメール約200通の約9割が「支持する」という内容だった。「ナナゲイ(第七芸術劇場)ならやると思っていた」とも言われ、うれしかった。実際に不当な圧力がないのに公開の中止はできない。
大阪は地方の代表と言われる。その大阪の映画館が上映を中止すれば、地方の映画館も次々と断念するのではとの危機感もあった。見る場所を提供するのが映画館の役目だ。靖国神社で何が起こっているのかを多くの人が知る契機になればいい。内容は観客が判断すればよく、社会で議論されるべきだ。東京など一部映画館での「靖国」上映中止には、「面倒は避けよう」という社会全体の空気が影響していると思う。異なる考え方を排除することが正しいはずはない。ナナゲイには、戦争や社会問題を題材にした良質なドキュメンタリー映画を上映してきたという自負がある。
(読売新聞 2008年5月10日関西発)
大阪で「靖国」上映満員で別会場も用意
一時公開が危ぶまれた日中合作のドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」(李纓監督)の上映が10日、大阪市淀川区の映画館「第七芸術劇場」でも始まった。関西では初の一般公開。
午前9時半の上映開始を前に、若い女性やスーツ姿の男性らが雨の中、続々と同館のあるビルへ。立ち見を含め定員140人の館内はいっぱいとなり、劇場側は急きょ同じビルの中華料理店の宴会場でも上映。約100人が鑑賞した。
街宣車が来るなどの混乱はなかった。
鑑賞を終えた大阪府茨木市の大学院生井上阿紀子さん(22)は「メッセージ性は強くなく、受け手に委ねられていると感じた。騒がれたのは一部の人が極端に受け取ったからではないか」と感想を話した。
上映は6月6日まで。反応が良ければ期間を延長する。京都や広島などの約20の映画館でも順次公開される予定。
(共同通信 2008年5月10日)
映画「靖国」、大阪でも公開 全国で2番目
上映中止問題で論議を呼んだドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」の一般公開が10日、大阪市淀川区の第七芸術劇場でも始まった。東京に続いて全国で2館目の上映。「自分の目で作品を見たい」「話題になったから」と早朝から行列ができ、入りきれない観客のために臨時会場も設けられた。
◇
阪急十三駅近くの商店街にある第七芸術劇場では、予定より1時間早い午前8時10分に開場。96席がすぐに埋まったため、急きょ同じビルの宴会場に120席の臨時会場を設け、機材を持ち込んで上映した。臨時会場の設置は開館以来初めてという。
劇場では約20人のボランティアを配置したほか、大阪府警の私服警官がスクリーン脇に座るなどトラブル警戒にあたった。
午前3時ごろから並び始めたという一番乗りの香川県坂出市のパート従業員女性(49)は「報道に取り上げられているのを見て興味を持った。いま改憲論議があるなかで、ぜひ見たいと思った」と話した。午前6時すぎから並んだ大阪府池田市の会社員牟田敏彦さん(56)は「自分の目で作品を見たいと思って来た」と話していた。
第七芸術劇場では、東京や大阪の映画館が相次いで公開中止を決めるなか、4月初めに予定通り上映することを表明。松村厚支配人は「映画館は観客に作品を見せ、議論が生まれるきっかけを提供する場。最終的にそれが表現の自由につながるのかもしれない」と話す。同館では16日まで一日2回、17〜23日は一日3回の上映を予定している。上映回数は未定だが、24日以降も上映する。
全国に先駆けて3日に一般公開された東京・渋谷のシネ・アミューズでも、一日8回の上映は毎回満席が続いている。当初、9日までの予定だった上映だが、10日以降も延長して上映するという。
一方、映画の中心的な登場人物で、国会で「映像の使用を承諾していない」と取り上げられた刀匠(90)は、高知県内の自宅で暮らしている。刀匠の妻(83)は「たくさん電話がきて、何が起きているのか分からなかった。夫は高齢、疲れてしまった」と振り返り、「見る人がいるんだったら、見てくれればいい。結局、李纓(リ・イン)監督からは何の連絡もないし、私たちのところに来ることもなかった。ただもう静かに過ごさせてもらいたい」と淡々と話した。
(朝日新聞 2008年05月10日 関西)
|