第169回国会 参議院 内閣委員会 第3号 平成20年03月27日
有村治子議員の質疑
平成二十年三月二十七日(木曜日)
午前十時開会
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委員の異動
三月二十六日
辞任 補欠選任
長谷川憲正君 自見庄三郎君
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出席者は左のとおり。
委員長 岡田 広君
理 事
松井 孝治君
山根 隆治君
有村 治子君
松村 龍二君
委 員
相原久美子君
神本美恵子君
工藤堅太郎君
自見庄三郎君
芝 博一君
島田智哉子君
柳澤 光美君
岩城 光英君
北川イッセイ君
鴻池 祥肇君
中川 義雄君
風間 昶君
糸数 慶子君
国務大臣
国務大臣
(国家公安委員
会委員長) 泉 信也君
国務大臣
(内閣府特命担
当大臣(少子化
対策、男女共同
参画)) 上川 陽子君
国務大臣 渡辺 喜美君
内閣官房副長官
内閣官房副長官 岩城 光英君
大臣政務官
外務大臣政務官 小池 正勝君
文部科学大臣政
務官 保坂 武君
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会計検査院長 伏屋 和彦君
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事務局側
事務総長 小幡 幹雄君
常任委員会専門
員 小林 秀行君
衆議院事務局側
事務総長 駒崎 義弘君
裁判官弾劾裁判所事務局側
事務局長 濱坂 豊澄君
裁判官訴追委員会事務局側
事務局長 白井 始君
国立国会図書館側
館長 長尾 真君
政府参考人
内閣官房内閣審
議官 木坂 愼一君
内閣府規制改革
推進室長 小島愛之助君
内閣府政策統括
官 柴田 雅人君
内閣府仕事と生
活の調和推進室
次長 山田 亮君
内閣府男女共同
参画局長 板東久美子君
宮内庁次長 風岡 典之君
警察庁生活安全
局長 片桐 裕君
警察庁刑事局長 米田 壯君
警察庁警備局長 池田 克彦君
総務省行政評価
局長 関 有一君
外務大臣官房長 林 景一君
外務大臣官房審
議官 猪俣 弘司君
外務省北米局長 西宮 伸一君
文部科学大臣官
房審議官 土屋 定之君
文化庁文化部長 尾山眞之助君
厚生労働大臣官
房審議官 中尾 昭弘君
厚生労働大臣官
房審議官 森山 寛君
厚生労働大臣官
房審議官 村木 厚子君
厚生労働省職業
安定局次長 大槻 勝啓君
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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○平成二十年度一般会計予算(内閣提出、衆議院
送付)、平成二十年度特別会計予算(内閣提出
、衆議院送付)、平成二十年度政府関係機関予
算(内閣提出、衆議院送付)について
(皇室費、国会所管、会計検査院所管、内閣所
管(人事院を除く)及び内閣府所管(内閣本府
(沖縄関係経費を除く)、国際平和協力本部、
日本学術会議、官民人材交流センター、宮内庁
、警察庁))
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○委員長(岡田広君) 午後一時十分に再開することとし、休憩いたします。
午後零時十五分休憩
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午後一時十分開会
○委員長(岡田広君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、平成二十年度総予算の委嘱審査を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。
○有村治子君 自由民主党の有村治子でございます。
今日は、担当させていただく質問、九十六分間でございますが、それを主に、日本が情報ということをどのように重要に思っているのか、また国家の機密に対してどのような整備があるべきなのかということ、インテリジェンスについて前半お伺いし、また後ほどには文化行政における予算の適切な執行ということの是非について質問をさせていただきたいと存じます。
それぞれの政府参考人の方々、また官房副長官始め政務官の皆様の御協力に心から敬意を申し上げます。
今朝の朝刊各紙でも防衛秘密に関する記事が報じられておりますが、国家のたがが緩んでいるんじゃないかと感じずにはいられないような機密、国家機密に対しての漏えい事件が相次いでおります。例えば、本当に大変残念なことでございますが、内閣情報調査室の職員であった清水稔彦氏が在日ロシア大使館員に情報を渡して現金を受け取っていたという事件が明るみになりました。清水氏は世界各国の画像処理を行う、町村官房長官も言及されていました内閣衛星情報センターに勤務していたこともあり、情報調査室研究部、つまり情報機関の中枢にいた人物でございます。
報道によれば、この清水氏は、十年にわたって、歴代五人の駐日ロシア大使館所属の書記官、という名の実は情報員でございますが、の間で情報提供協力者となって現金四百万円を受け取っていたと報じられています。これは典型的なスパイ事件だと認識をしています。
清水氏は収賄と国家公務員法違反、守秘義務違反の疑いで書類送検をされていましたが、どんなたぐいの秘密を漏らしたのでしょうか。
○政府参考人(池田克彦君) ただいま御指摘の職員でございますけれども、内閣情報調査室における勤務を通じまして、その職務上知り得た情報を漏えいしたものでございますけれども、具体的にどのような情報を漏えいしたかについてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
○有村治子君 ありがとうございます。
昨日通告をさせていただいた上で、私も国家機密の調査そのものについてつまびらかにするということはよろしくないという判断をいたしました。十分なお答えというふうに受け止めます。
今の御発言を伺いますと、そこの職場にいなければ、そこの職に就いていなければ知り得ない情報を漏らしたというチャージであったというふうに認識をしています。
一昨日、この清水氏が、書類送検をされていたんですが、起訴猶予、事実上の不起訴となりました。つまり、懲戒免職以外おとがめなしという制裁でございます。罰金刑もなく、ロシアの情報員から受け取った四百万円の提出を求められてもいません。えっ、単に書類送検の後不起訴なの、これでは業務上過失傷害と何が違うのという不思議な感じがいたします。
国民の安全を左右する安全保障や対外情報を集めて国のかじ取りをする首相や官房長官などトップリーダーに報告する部門の人間が、国を売って、国民を危険に陥れたかもしれないロシアのスパイ行為に加担したという国民国家に対する背信に対して、これが適切、適量な制裁だと認識されているのでしょうか。官房副長官に伺いたいと存じますが。
ちなみに、諸外国では、国家の安全保障に対する秘密を漏らした場合、国家機密法などによって、深刻な場合はアメリカやフランス、ロシア等では最高刑として死刑、ドイツでは無期懲役刑が科せられます。私は、清水さんの処分をどうすべきと言うつもりではありません。国家機密、その情報員が対外のインテリジェンスに対して国家国民を背信したということが懲戒免職以外のおとがめなしというこの状況が果たして適切、適量なのかという御認識を伺います。
○内閣官房副長官(岩城光英君) 政府といたしまして情報機能の強化に努めている最中にこのような事案が起きてしまったこと、本当に遺憾であると考えております。
ただいま委員からも御指摘がありましたけれども、当該職員に対しましては、本年一月十七日に、国家公務員法に定める処分としましては最も重い懲戒免職とするとともに、一月二十四日には、管理監督者についても懲戒処分等の所要の措置を講じております。
また、これもお話にありましたとおり、東京地方検察庁において不起訴処分に付されております。この処分につきましては、検察当局において法とそれから証拠に基づきなされたものと承知しておりますけれども、個別事件の刑事処分のその判断につきましてはお答えを差し控えさせていただきたいと考えております。
いずれにしましても、本件の重大性にかんがみまして、当該職員に対して国家公務員法上最も重い懲戒処分を行ったところでありまして、今後こうした事案の防止に関し、政府としては万全を期してまいりたいと、このように考えております。
○有村治子君 単なる秘密を漏らしたというのではなくて、やはり諜報に加担をしていた、国を、国民を危険に陥れるかもしれないおそれがあったということを考えれば、もう少しこのことを教訓として私たちはその現実に向き合っていかなければならないと考えております。
ロシアは、グローバル情報戦、スパイ活動を展開しているという認識を、今回のことを勉強させていただいてつくづくそういう実感を持ちました。金をもらい恩義を感じた、悪いことだとは思っていたが金をもらっていてやめられなかったというふうにS氏、清水さんは答えていらっしゃるようでございますけれども、それで官房副長官がおっしゃったように、一番重いのが懲戒免職、つまりその職場を去れというだけで適切なのかなというのは、今の御答弁を伺っても私はまだ完全には納得し切れないような思いでおります。
この清水氏は、時に、一か月に一回と言われるほど頻繁なコンタクトを駐日ロシア大使館のベラノフ・コンスタンチン二等書記官と取っていました。この二等書記官は、いわゆるプロパーの外交官ではなくて、ロシア軍の諜報機関、軍参謀本部情報総局所属の情報員でございます。この事件発覚後、コンスタンチン書記官はロシア本国に帰国してしまっています。
このGRU、軍参謀本部情報機関というロシアの情報組織はどういう性質の組織でしょうか。
○政府参考人(池田克彦君) 御質問のGRUでございますけれども、ロシア連邦軍に属します対外情報機関でございまして、軍事政策、軍事技術等の分野に関して活動を行う機関であるというふうに認識しております。
○有村治子君 ソ連の崩壊後、KGBは解体されて対外情報局SVRに引き継がれたにもかかわらず、このGRUというコンスタンチン書記官が所属していた機関は、冷戦後も資金、要員を削られずに暗躍しているロシア最大の情報機関だと学びました。また、軍事機密だけではなくて、現在は産業的なスパイの活動もやっているというふうに通常のインターネットなどで調べても出てまいりました。
さて、この書記官以外も、ロシア大使館員はGRU所属の情報員だった疑いを持たれています。GRUなどの情報員が外交官、大使館付き武官として合法的な身分で日本に入国することというのはよくあることなんでしょうか。
○政府参考人(池田克彦君) 我が国におきまして、今御指摘のGRUを含めましてロシアの情報機関員の相当な数が、大使館員、通商代表部員等の身分を装って活動しているというふうに認識しております。
○有村治子君 残念なことですが、そのことも、やはり合法的な外交官として入国されたら、その方が国内で自由に泳いでいてもコントロールができないという現実に直面している状況でございます。コンスタンチン元書記官も、今回のことで贈賄などの疑いで書類送検をされ、後に不起訴となりましたけれども、日本がこのような合法的なステータスで入ってきている実態はロシアの諜報員に対してできるおとがめというのは実質ゼロであります。この情報員は、帰国したロシア本国では、おとがめどころか、でかした、優秀な情報員だと敬意が向けられるはずだと思います。
今日も配付資料として警察庁からいただいた資料を皆様にお配りさせていただいております。戦後、日本の旧ソ連、ロシア関係から仕掛けられたスパイ事件、一覧をしたものでございます。これによりますと、本当に自衛隊、陸海空それぞれの部隊がその諜報の対象として、また実際に仕掛けられているということが一目しただけでも分かります。
そこで伺います。スパイに対する日本のセキュリティー、守りはどのくらい万全なんでしょうか。GRUなど対外国のインテリジェンスに日本は振り回されっ放しなんでしょうか。
○政府参考人(木坂愼一君) スパイというのをどのような言葉で定義するかということはございますけれども、我が国におきましては、外国の情報機関員による違法な情報収集活動が摘発されるなど、外国情報機関による情報収集活動が依然として行われているものと認識しております。
この種の活動に関しましては、捜査当局において情報収集・分析を行うとともに、違法行為に対しては厳正に対処されているということを承知しておるところでございます。
政府全体におきましても、こうした外国情報機関員による情報収集活動から我が国の重要な情報を守るべく、昨年の八月でございますが、各行政機関が統一的な対策を取るためのカウンターインテリジェンス機能の強化に関する基本方針を策定したところでございます。
今後は、これに基づきまして本年四月一日に内閣情報調査室に設置されますところのカウンターインテリジェンス・センターを中心にしまして、政府全体としてカウンターインテリジェンスの強化に取り組んでいくという考えでございます。
○有村治子君 一週間もしないうちにカウンターインテリジェンスの強化が図られるということ、国民の一人としても是非ともよろしくお願いしたいと思う次第でございます。
四百万円の現金を清水氏が受け取ったとされていますが、そんな単位の対価では済まされない機密情報がロシアのスパイに渡る危険性もあったわけです。そもそも、国家機密を官邸、日本の最高指導者に届けねばならない身内も身内、内閣情報調査室の人間がスパイにしてやられたというのは、悔しいですが、残念ですが、国家のたがが外れているというふうに言わざるを得ない状況でございます。情報の価値が国家国民の運命を左右するという緊張感の下に、世界各国が張り巡らせている諜報や情報戦、喧伝戦に日本という国が、また日本人という民族がなぜこれほどまでに無頓着になってしまったのかという思いを持ちます。
戦時中、日本が発した機密情報は傍受され、暗号が解読され、ことごとく作戦がアメリカに筒抜けになっており、陸軍中野学校で情報戦に備えようとするも、日本は二十世紀最大のスパイと称されるソ連、スターリンと通じていたゾルゲの暗躍を許し、その後、ソ連は日ソ中立条約を破棄してソ連の対日参戦を許し、戦後に武装して北方領土を不法占拠した、その状態が続いています。
情報の価値が国家の運命を左右し、国民の安否に直結するというのは、第二次世界大戦で日本が学ばなければならない痛い教訓であったはずです。もっと言えば、この世界情勢が分かっていたら、果たして、本当に正確で的確な情報が意思決定者に伝えられていたら、日本はあの時代、戦争に本当に突入したであろうか、あれだけの大国を敵に回すということを本気で考えたであろうか、そんな思いが、その教訓を学び取らなきゃいけない若手として思っている私にはその問いにはまだ解決を見出しておりません。
戦争を紛争解決の手段として選ばずに、平和国家として実績を積み上げてきている現在の日本を慈しむからこそ、戦わずして安全保障を確保するための的確な情報が必要になると信じています。
上海での日本総領事館のスタッフが中国情報当局との情報戦において自殺に追い込まれた事件が起こって四年近く、また、この一件が当時の首相、小泉首相、安倍官房長官、官邸に初めて知らされ、国民が報道によって広く知ることになってから二年余りがたちます。
情報戦のターゲットとなり、国の機密を中国当局に売ることはできないと自らの命を絶って情報戦の犠牲者となったのは、総領事館と本国外務省本省との間でやり取りをされる機密性の高い文書の暗号通信を担当する電信官でございました。職責上、重要な情報は彼のところに集まる仕組みでございました。
そこで、伺います。
情報、諜報のプロが外交官や国家機密を知り得る立場の者をねらってくる、時に籠絡したり、時にその情報を封殺する典型的な方法にはどういったものがあるのでしょうか。
○政府参考人(木坂愼一君) すべてのことについてつまびらかに承知しておるわけではございませんけれども、外国の情報機関が違法な情報収集活動を行うに際しまして相手方から情報を提供させるために用いる方法としましては、例えばシンポジウム等の会合で知り合った後、飲食店等で接触を繰り返しまして情報提供の見返りに報酬として現金を提供するといったようなケース、あるいは私生活上の弱みを把握しまして、脅迫や恫喝といった行為を行って情報を得るというようなことがあるということなどを承知しておるところでございます。
○有村治子君 私のような素人が理解しているだけでも、今私生活とかなりマイルドな言い方をされましたけれども、典型的なものにはいわゆるハニートラップ、女性を送り込んで交遊を展開させて相手の性的な弱みを握る、いわゆる色気仕掛けというものや、あるいは現地の女性と結婚、家族、家庭をもうけた日本人に対して妻子を人質にコントロールを強めていく方策や、あるいは今回の内調にいた清水氏の事例に当てはまるように、飲食の接待から始まって、だんだん高額な現金を授受するまでエスカレートする過激な接待によって対人アプローチをする、あるいは技術的に盗聴を行う、監視を行うというものがあり得ると思っております。これは、当然、外務省さんあるいは内閣で常套手段としてのノウハウを持ち得ていらっしゃると思います。
上海の事件は情報戦においてはクラシックな籠絡方法が取られたと思っております。この不幸な事件を契機として、大森義夫元内閣情報調査室長が新聞紙上でコメントを出されています。これは情報戦での日本の敗北だというふうにおっしゃった上で、新人にインテリジェンスのイロハを教えるカリキュラムが全くなく、実質的なインテリジェンスに対するオペレーションの教育訓練を全くしていないとおっしゃっています。その上で、大森氏は、大使館員、領事館員、公務員の何かあったときの申立て制度、コンサルティングの充実をして、脅迫の現場を逆に録音、撮影するようにして、例えばウィーン条約違反として訴えることができるような体制づくりや、あるいは旧共産圏の国に派遣される館員を対象に情報防御、カウンターインテリジェンスの事前教育を徹底するということが大事だ、大切だと訴えられていらっしゃいます。
今回のことを契機に、外務省やあるいは日本政府が取った防諜、工作対策にはどんなものがありますでしょうか。
○政府参考人(木坂愼一君) 外国情報機関によります情報収集活動から我が国の重要な情報を保護することについて更なる対策の強化が必要だということで、先ほども申し上げたところでございますけれども、平成十八年十二月に内閣官房、内閣府、外務省を含めますところの各省庁から構成されますカウンターインテリジェンス推進会議が設置されまして、同会議におきまして昨年八月、先ほど申し上げましたカウンターインテリジェンス機能の強化に関する基本方針を策定しまして、行政機関が統一的な対策を取るという考えでおります。
これに基づきまして、本年四月一日から、カウンターインテリジェンスに関する情報の収集それから共有、カウンターインテリジェンス意識の啓発、事案発生時における組織としての対処、管理責任体制の構築につきまして施行をするという段取りになっておりまして、また来年の四月一日からは、特別に秘匿すべき情報に関しまして、厳格な物的管理でありますとか、秘密取扱者適格性確認制度、管理責任体制の明確化、秘密保全研修制度に関しまして政府の統一的な基準を設けまして、カウンターインテリジェンスにかかわる施策を政府一体として取り組むという考えでおるところでございます。
○有村治子君 今、政府全体の防諜、工作対策ということを、防諜対策をおっしゃっていただきました。
今回の事件を機に外務省さんが取られた防諜の対策というのは、防諜研修受講者を約三倍に増やす、防諜工作のターゲットとなってしまった場合の対処ルールを策定する、それから在外公館の機密情報を扱う部署、本省とのコミュニケーションですね、重要な機密のコミュニケーションを行う部署では、現地採用、いわゆるそれぞれの在外のローカルハイヤーの外国人職員との別室化を徹底して、物理的に困難な場合はそのローカルハイヤーの外国人職員との仕切り等を設置するという対策が取られました。
典型的な情報を取る一つの方策としては、例えば運転手さんや家政婦、料理・給仕人、ホテルマン、通訳など、要人の身の回りにいても不思議ではない役職に成り済まして情報員を送り込むということもあり得ます。
その中では、そういうことを考えますと、やはり在外公館の機密情報を扱う部門を物理的に仕切り等で設置するというのは、私の観念では、仕切りというのは、例えばつい立てとかアコーディオンドアとかカーテンとかパーティションとかブラインド、植木くらいかで、本当にそのような仕切りを置いたくらいで情報の不正アクセスの抑止力になるのかどうかということを疑問も持ちます。
このような在外の公館はどのくらいあるのでしょうか。小池外務大臣政務官に伺います。
○大臣政務官(小池正勝君) 御指摘の、現地職員の執務室の仕切り対策ということでは不十分ではないかと、こういう御趣旨だろうと思っておりますが、私ども、この仕切り対策だけでこれを対応しているわけではございません。
先ほどおっしゃられましたけれども、まず、御指摘の現地職員対策といたしましては、在外公館施設への出入りに制限を設けること、それから極めて限定された、例えば秘書というような極めて例外的な人を除いて秘密文書を扱わせてはならないこと等々、現地職員と執務区域を区分すべきことなど詳細に定めて対応しているところでございます。
○有村治子君 そうであっていただきたいと心から願います。
と同時に、昨日の外務省の方等伺ったところ、パーティションで仕切られているような在外公館が幾つあるかというのは把握していないということでございました。やはり私は、在外公館において、ワインも大事かもしれませんけれども、やっぱりパーティションというんじゃなくて、情報機密を守るというためにしっかりと別室化をするような予算、こういうところにこそ予算を使っていただきたいというふうに思います。
そういう意味では、小池外務政務官におかれましても引き続き御活躍をいただいて、こういう指摘があるから別室化はちゃんと予算を取るんだという動きをつくっていただきたいと存じます。
次に、官房副長官にお伺いさせていただきます。
今私が申し上げたような事件以外にも、自衛官によるイージス艦の機密情報がコピーにコピーに孫コピーというふうにどんどんと広がって、そのイージス艦の機密情報が、一般の隊員の間では趣味、娯楽あるいは女性の映像と同じようなCDやCD―ROMなどに収められていた。そして、この調査に当たった警察の方々は、どこからその機密情報を入手したかもみんなが分かっていないというぐらいの危機感のなさに驚いたという報道がございました。
イージス艦は、日本のみならずスペインなども買っていると思います。そこの情報機密が、アメリカは中国などに流れたということを大変懸念されたというふうに思いますけれども、スペインなどもイージス艦を買っています。日本がその情報を漏えいしたとすると、どこがイージス艦は強くて、逆にどこがイージス艦の弱みなのか、どこが守れてどこが守り切れないのかという情報を世界で共有することになってしまいます。
そうすると、日本には自らの危険を賭して莫大な費用を掛けて知り得たあるいは作ってきた我が国の情報機密を共有できるだけの安全性がないと友好国に判断されれば、国際的な情報収集活動の連携、共有にも支障を来します。アメリカ中央情報局、CIAなどの友好国の情報機関から新鮮で的確な情報が入らなくなり、また米国製の最新鋭の技術を搭載した防衛備品が購入できなくなるなど安全保障上の損失も案じられると思いますが、この点についての官房副長官の御所見を伺います。
○内閣官房副長官(岩城光英君) 有村委員御指摘のとおりだと私も思っておりますし、国家としてきちんと機能するためには、情報管理の徹底、また情報保全の徹底、これはあらゆる情報活動の前提であると、このように考えておりますので、しっかりと対応していかなければいけないと考えております。
○有村治子君 情報を守れない人には情報を分けてもらえなくなるということをやはり私たち肝に銘じなければならないと、私自身、自戒の念を持っております。
諜報工作の対象としては政治家がそのターゲットになる可能性は非常に大きいのですが、特に国会議員ですね、がターゲットになる可能性は非常に大きいのですが、こうやって不正アクセスを防ぐ、防諜という意味でのトレーニングの対象にはほとんどなっていません。小泉総理が訪朝をされたとき、おにぎりを持参されて、つまり先方から供されたものは一切食べずに、また盗聴のおそれのある場所で寝ないということで、政府専用機を使って日帰りをされました。盗聴に対する手段も複数取られていたと伺っておりますが、通常の議員外交の場合は何の研修もオリエンテーションもなく、言わば丸腰で、極めて友好ムードで行われる場合も少なくありません。私も参議院を代表してなどで海外に派遣をしていただいたことがありますが、そのときにトレーニングを受けたという記憶は一切ありません。
情報の扱いにナイーブな日本だからこそ、こういう実態があることを共有して警戒をする習慣、また警戒できる体制を持っていないと次もターゲットになって犠牲者が出るおそれが払拭できません。国の重要な機密に関しては、その情報に触れる人たち、私たち国会議員も含めて、国家公務員、防衛産業に携わる一部の民間人なども、その重要性をかんがみた上で決して対外的な漏えいがなされないよう適切な機密情報保護法制を整備することも重要だと思われますが、官房副長官の御所見を伺います
○内閣官房副長官(岩城光英君) 今お話ありました現在の我が国の秘密保全に関する法制でありますけれども、個別法によって差異が大きいんですよね。例えば国家公務員法等の守秘義務規定、これに係る罰則の懲役刑は一年以下とされております。その抑止力が必ずしも十分でないと、そういった問題を抱えているものと認識をしております。このため、先般、町村官房長官から指示がございまして、二橋官房副長官を長とする検討チームを設置いたしまして、我が国にとって本当にふさわしい法制の在り方について検討を進めることといたしました。
いずれにいたしましても、この種法制につきましては国民の広範な理解を得ることが必要でありまして、いろいろな様々な場における議論にも十分に留意しつつ、政府として対応していきたいと考えております。
○有村治子君 インテリジェンスに対しての知識や御経験、また御関心も非常に高い町村官房長官の下で、日本の国民を守るという視点でこの分野の探求を進めていただけることを願います。
申し上げるまでもなく、私が関心を持っているのは対外情報、インテリジェンスであって、一般市民に向けて捜査権の濫用があったり情報戦の対象となるようなことがあってはならないと固く信じています。機密保全に関する法体系を整備する場合は、やはり情報公開、国民の皆さんに対する説明責任の視点も当然重要になってきます。何年たってどういう基準がクリアされたらこのような機密も公文書として公開するというルールを明確にすることも肝要です。やはり、国民の知る権利をしっかりと保障し、また的確な報道の自由ということを守ろうとする、そういう視野も入れながら法整備の在り方について御検討いただきたいと存じます。
今回の事件で露呈したように、インテリジェンスにおける攻防の訓練というのは、外務省所属で在外公館に勤務する国家公務員ばかりではなくて、実際に日本に暮らす公務員がねらわれて協力者に仕立て上げられていた、この教訓を基に、やはりそのトレーニングは国内要員も対象にすべきだというのが今回の教訓だと思っています。
戦後、旧ソ連とロシアの情報員によって日本国内で起こった諜報事件は二十件を超えているというふうに聞きました。KGB、ソ連の国家保安委員会出身のプーチン政権の下、ロシアは情報機関を強化していると聞いています。日本でも諜報活動を活発化させて、日本の内外情勢、軍事動向、あるいは今回のように中国をどう見ているのかということも関心があるのかもしれません。
先端科学技術に食指を伸ばしているという報道がありますが、これは信憑性の高い認識でしょうか。
○政府参考人(池田克彦君) 我が国におきましてロシアの情報機関員によります違法な情報収集活動でございますが、今御指摘のとおり、依然として大変活発でございます。ソ連崩壊後も、本件を含めてロシアによる諜報事件は八件検挙しております。また、今御指摘のとおり、最近では、我が国の民間企業が持っている先端科学技術を違法な手段で入手するというような諜報事件を平成十七年、十八年と連続して検挙しております。
警察といたしましては、このような犯罪行為で我が国の国益が損なわれることのないように、今後とも厳正な取締りをしてまいりたいと考えております。
○有村治子君 コメントありがとうございます。
今のお話によっても、日本で普通に暮らしている私たちのそう遠くはないところでインテリジェンスの活動が外国の人々によってなされているということが不思議ではないという、そんな認識を新たにいたしました。
もとより、各国が相反する国益、思惑を持ってそれぞれ国益を懸けて展開される対外情報・諜報戦は、常に危険と誘惑、権力と孤独と隣り合わせだと思います。尋常ならぬ緊張を強いられ続けます。インテリジェンスは、この人は大丈夫と判を押された人が外国のプロの情報員の手に落ちて、何でこの人がと驚嘆される歴史の積み重ねでもあります。実際、今回報道にありました清水さんも、かなり勉強熱心で、自らも一生懸命まじめにやられていた、職務を遂行されていた、元々はそういう方だったと伺っております。
国民が安心して心豊かに暮らせる国家像を最高の価値として、そしてそれに貢献できることに誇りを持って国民国家に忠誠を誓い、また卓越した専門知識や語学力などを駆使して使命を全うできるだけの技能を持ち得る人しか就いてはいけないのがこのインテリジェンスのポジションだと認識します。
そこで、官房副長官にお伺いします。
果たして現代の日本はこのインテリジェンスの宿命、大変厳しい宿命でございます、危険も伴います、この宿命に耐え得る人材をつくっているのかどうか、国家機密を守るという国としての基本的な体制が築けているかどうか、御所見を伺います。
○内閣官房副長官(岩城光英君) 一昨年の十二月に、官房長官を議長として情報機能強化検討会議が設置されました。それは、複雑多様化する国際情勢の下、我が国の国益を守り、また国民の安全を確保するためには情報機能の強化が不可欠であると、こういった考え方によるものでございます。
先般、その取りまとめが行われました。これによりまして、我が国の国家戦略の策定に資する情報機能の構築、あるいは情報コミュニティーの英知を結集した情報分析を行う体制を確保する、さらには、政府の情報機能強化のための研修その他の基盤整備等に道筋を付けることができたわけであります。
そこで、御指摘の、国民の理解、あるいはインテリジェンスに当たる人たちの能力、体制に関してでありますけれども、今後も取り組むべき課題、これは少なくないと考えております。これから広く国民の理解を得ながら対外人的情報収集に携わる専門家の育成や、より専門的かつ組織的な体制の在り方の研究など、引き続き政府の情報機能の充実強化に全力を挙げて取り組んでまいりたいと、このように考えております。
○有村治子君 是非、的確かつ健全な調査研究をしていただけますよう、よろしくお願いいたします。
インテリジェンスに関する質問は以上です。
次に、宮内庁に伺ってまいります。
複数のメディアで、皇太子殿下がもうあと四か月に迫った北京オリンピックの開会式に御出席のため訪中されるのではないかというような記事が出回っています。外務省を中心とする政府の検討事項として、皇太子殿下を始め皇族方の北京オリンピック開会式御出席の打診は宮内庁に実際にあるのでしょうか。
○政府参考人(風岡典之君) 最初に、手続的なことについて触れさせていただきたいと思います。
一般的に、皇族方の公式な外国御訪問は、外務省を中心とした政府の関係機関において検討がなされた後、外務大臣から宮内庁長官に対しての御訪問の要請がなされ、これを受けて宮内庁が外務省等政府関係機関と調整をした後、政府として閣議了解などの手続が取られております。
そこで、皇太子殿下の北京オリンピック開会式御出席のための訪中について、外務省から宮内庁に対して中国御訪問の要請はあったのかとのお尋ねでございますけれども、これにつきましては、今のところ宮内庁は外務省からそのような要請を受けておりません。
○有村治子君 今上陛下が訪中された一九九二年の十月、中国からの再三の招聘を受けてということでございましたけれども、報道によりますと、中国の元外相はその回顧録で、天皇陛下による訪中が、八九年の天安門事件で西側諸国が態度を硬化させて対中政策をしていました。それを打破する上でのきっかけとなって積極的な効果を発揮した、その意義は日中二国間の関係の範囲を超えたというふうに皇族、天皇陛下、皇后両陛下の政治利用を活用したということを認めていらっしゃいます。
もとより、オリンピックというのは、それぞれの地域や言葉やいろんな政治体制の違いを乗り越えて、それぞれが本当に丹精込めて練習をしたスポーツアスリートがスポーツマンシップを発揮して技を競い合う、心身を競い合うという本当にフェアなすばらしい活動だと思っていますが、胡錦濤政権は、現在、北京五輪を政権の求心力を増すために全力的に活用するという構えで、やはり皇族方の開会式の御出席というのは、その成功を内外に誇示できる機会というふうな見方もございます。当然、国家の威信を懸けて取り組む北京五輪の成功を最大限に演出したいという思惑があると思われます。
しかし、チベットでは、先日、皆様御承知のとおり、僧侶や市民によるデモに対して、中国当局の下、武装鎮圧が行われて、中国の人権問題を案じる国際世論が高まっています。チャールズ皇太子を含めイギリスの皇室もこの問題を懸念されていると、その旨報道されています。また、フランスのサルコジ大統領もこのことにコメントをされています。
皇室、皇族方の対外的な政治利用がないよう、このようなチベットの武力、武装鎮圧ということもかんがみて、くれぐれも慎重の上に慎重を期して国際情勢を判断していただきたいと考えますが、官房副長官のお考えを伺います。
○内閣官房副長官(岩城光英君) これまで皇室の外国訪問につきましては、政府としましては、もろもろの事情を踏まえつつ慎重な検討を経て決定してまいりました。
したがいまして、おただしの北京オリンピックの開会式につきましても、諸般の事情を踏まえつつ慎重に検討してまいる考えでございます。
○有村治子君 日本を始めそれぞれの国を代表するスポーツアスリートの皆さんの健闘を私も心から願い、応援もしたいと思っております。
ただ、やはり皇室の、今官房副長官がおっしゃっていただいたように、政治利用ということは極めて、ここにも視野を配っていただいての御判断、検討をしていただきたいと存じます。
官房副長官は公務が重なっていらっしゃる旨伺っておりますので、これで向かっていただいて結構でございます。
○委員長(岡田広君) 岩城内閣官房副長官は退席いただいて結構です。
○有村治子君 それでは、文化行政に対する予算の適切な執行がなされたかどうかという点におきまして、映画「靖国」について質問をさせていただきます。
映画「靖国」は、文化庁所管の独立行政法人日本芸術文化振興会において平成十八年度の芸術文化振興基金、記録映画募集分の助成対象に採択されて七百五十万円の公的助成金を受けた映画で、来月公開予定というふうに理解をしております。
文化庁尾山文化部長、今日参考人でお越しになっていただいています。また、この日本芸術文化振興会の会長はこれらの映画を御覧になりましたでしょうか。本件を所管される系統、直接の責任のある系統において、見たことのある人の中で責任、権限が一番高い職員の人はどなたでしょうか。
○政府参考人(尾山眞之助君) 私、文化部長でございますが、私が一番責任が高い立場にございます。
○有村治子君 この芸術文化振興基金は、助成金を交付するに当たり、配付資料で私の事務所が書かせていただきました、出典は元々助成金募集案内でございますけれども、助成金を交付するに当たり芸術文化振興基金助成金交付の基本方針を出しておられます。そこで書いてございますように、これは灰色で囲んでおります、以下以下これこれのことを助成すると。「ただし、商業的、宗教的又は政治的な宣伝意図を有しないものとします。」というふうに明確に書かれています。ここが最大のポイントの一つになると認識をしております。
そこで、文部科学大臣政務官に伺います。
小泉総理の靖国参拝について、世論のみならず国政を預かる私たち国会でも、八月十五日前後には与野党の最大の関心事となり、是非が議論されました。このことは政治的な事柄でしょうか。
○政府参考人(尾山眞之助君) 独立行政法人日本芸術文化振興会の芸術文化振興助成金交付の基本方針におきまして、基金による助成につきましては、政治的、宗教的宣伝意図を有するものは除くとされておるところでございます。この映画「靖国」の審査を行った記録映画専門委員会におきましてこの方針についての判断が行われたものと承知しております。
政治的テーマを取り上げることと、それから政治的な宣伝意図を有するということは一応分けて考えられると思っておるところでございまして、本件につきましては、政治的なテーマを取り上げていても政治的な宣伝意図を有するものとまでは言えないと専門委員会で判断されたと聞いておるところでございます。
○有村治子君 分かりました。
小泉総理の靖国神社参拝の是非をめぐって、宗教的、思想的な相違などの理由によって靖国神社を相手に裁判を起こし、自らの政治的主張を展開することは、これは政治的な事柄でしょうか、宗教的な事柄でしょうか。私は文部科学大臣政務官にお伺いしたいと存じます。
○大臣政務官(保坂武君) 本質問につきましては、これは時の総理が御判断をし対応をしている事柄と私どもは思っている次第であります。
○有村治子君 総理が御判断されるもので、政治的なんでしょうか、どうなのか、その点をお伺いします。
○大臣政務官(保坂武君) 私ども政務官の立場といたしまして、政府の最高責任者の立場でこの参拝については御判断をするものかと存じております。
○有村治子君 参拝の是非をめぐって御意見を伺っているのではありません。このような靖国神社の参拝の是非をめぐって靖国神社を相手に裁判を起こしている、そして自らの政治的主張を展開すること、このことは政治マターか宗教マターですか、どうですか、そうじゃないんですかということを伺っております。
○大臣政務官(保坂武君) いずれにいたしましても、これら問題は国際的な世論を巻き起こす問題でもありますので、私の答弁の方では差し控えさせていただきたいと存じます。
○有村治子君 今いみじくもおっしゃいました。国際的な世論を喚起するもの、つまり国際政治の場でも議論をされている極めて政治的なことでございます。今うなずかれたとおりでございます。私もそう思います。
今日、皆様に配付をいたしておりますように、この映画宣伝用のパンフレット二ページ目に記載されているとおり、この右、二ページ目の裏のキャストというところには三人の名前が書かれています。
この映画に出てくる中心人物のうち、三人のうちの二人であるこの菅原龍憲さん、高金素梅さん両氏は、小泉前首相の靖国神社参拝について、この映画の申請が出された当時も現在も靖国神社を相手取って訴訟を起こしており、当該映画のテーマである靖国神社とは係争関係にあります。しかも、この映画の中で両氏は彼らが現実の社会で提起している訴訟と同じ趣旨の主張をそのまま展開をされており、一連の靖国関係訴訟を代弁する政治的宣伝がキャスティングにそのまま反映をされています。にもかかわらず、この映画が宗教的、政治的宣伝意図を持っていないとどうやって断言されるのでしょうか。
○政府参考人(尾山眞之助君) 御指摘のように、高金素梅さん、菅原龍憲さんがインタビューで出ておられるのは事実でございますけれども、全体として政治的な意図を有するものとは言えないと、先ほど申し上げた記録専門委員会で判断されたということと承知しております。
○有村治子君 全体としては政治的意図を持っていないとおっしゃいますけれども、キャストとして挙がっている名前は三人しかないんです。そのうちの二人は靖国訴訟の原告なんです。
そして、ここに刈谷直治さんと、残り一名のキャストの名前が挙がっていますが、この刈谷直治さんはこの映画のキャストになることを知りませんでした。そして、今もキャストになることを了承していらっしゃいません。そして、この靖国神社に関してこの刈谷さんは政治的発言は展開をしておられません。
こんないびつな状態の映画がどうして政治的ではないとおっしゃるのでしょうか。三分の二は原告、靖国訴訟、今も係争中の原告でございます。もう一人は何も政治的コメントをしていない。三分の二が原告であるにもかかわらず、どうして政治的意図がないと言えるんでしょうか。教えていただきたいと存じます。
○政府参考人(尾山眞之助君) 審査に当たっては、制作会社から提出されました企画書、そして最終的に完成試写で専門委員会が確認しておりますが、その結果として、政治的な宣伝意図は有するものとまでは言えないというふうに専門委員会で判断されたというふうに承知しておるところでございます。
○有村治子君 尾山部長、随分強弁されていらっしゃるようですが、その強弁は後に苦しい立場をつくることと私は思います。
芸術文化振興基金から、今、尾山部長がおっしゃったように、審査を厳正にしていただいたというふうにおっしゃっていますが、助成金を受けようとしたこの有限会社龍影のチャンイ代表取締役は、助成金交付要望書を提出した最初の段階、十八年七月十九日です、その最初の段階から、その資料に、映画の概略には、小泉参拝をめぐり、靖国の政教関係を透視すると明確に書かれています。そして、主な主演者、キャストとしては、小泉首相靖国参拝を違憲と考えられる東京訴訟の会のメンバーを登場させる旨明記をして交付金交付の申請書を提出されます。つまり、申請者は、意図してこの問題を取り上げますと明確に書かれた上で最初の助成金交付要望書を出されているわけです。つまり、この助成金交付要望書が正式に提出された時点で、振興会がこれを公式に受理した時点で、この基金が助成を禁じている政治的、宗教的喧伝意図を有するものに当たるはずでありますが、それでも文化庁は、いや、この映画には、これには政治的、宗教的宣伝意図は入っていませんよと強弁されるおつもりでしょうか。御見解を伺います。
○政府参考人(尾山眞之助君) 先ほど申し上げましたように、政治的テーマを取り上げるということと政治的な宣伝意図を有するということは一応分けて考えられると考えておるところでございまして、本件につきましては、政治的なテーマを取り上げていても政治的な宣伝意図を有するものとまでは言えないと、その独立行政日本芸術文化振興会の専門委員会で判断されたと文化庁は聞いておるところでございます。
○有村治子君 それでは、別の観点から伺います。
靖国訴訟、つまり宗教法人である靖国神社を訴えている方が原告となってメーンキャストを成している。その方が実社会で実際に裁判で展開されている主張をそのまま映画の中でも宣伝されているのに、これが宗教的意図ではない、政治的ではないとおっしゃるのなら、何が宗教的宣伝、政治的宣伝に該当するのでしょうか。これから応募される方々、応募を希望していらっしゃる方々に向けても、また国民の税金の配分を決めるということでの調査権を行使している私たちにも分かる形で具体的に明示していただきたいと存じます。
○政府参考人(尾山眞之助君) 政治的、宗教的な宣伝意図を有するものかどうかは、交付要望書の内容を踏まえまして専門委員会において個別に検討されるものであると考えます。過去にそのような事例があるわけではございませんけれども、例えば特定の政党や特定の宗教法人のPR映画であれば該当するのではないかと思われるところでございます。
○有村治子君 PRではなくて、では、その方々の趣旨と全く違う、むしろ反日をしているというような場合はどうなるのですか。いいもの、PRだけはそれがアウトで、反PRであればそれはオーケーということでしょうか。
○政府参考人(尾山眞之助君) 具体の事例に即して専門委員会において個別に検討されるものと考えております。
○有村治子君 ということは、専門委員がキーの一つになってまいりますね。この映画を制作した李纓監督は、「北京周報」の日本語版でこのようなことをおっしゃっています。私の映画が具体的に示しているのは「菊と刀」で、その二者の間の関係だ、最後に問いただす最もかぎとなるのはやはり天皇の問題だ、天皇の問題が解決されず、永遠にあいまいのままに過ぎ去れば、靖国神社の問題を解決することはできないと北京週報に答えられているんです。公言されているんですね。ここでもこの映画に特定の政治的喧伝意図があることは明白になっているんです。
ちなみに、こちらのパンフレットにありますこの右側にはキャストとかスタッフとかいろいろ書かれていますが、委員の先生方御覧になってお分かりになってくださいますように、ほとんどが中国名でございます。これが果たして日本映画なのかなというふうに私は素直に疑問を呈じずにはいられないんですけれども。
この中で、八人のプロデューサーの名前が出ていますが、八人のプロデューサーのうち七人は中国の方でございます。日本人としてただ一人協力プロデューサーとして名前が挙がっている山上徹二郎氏は、この映画の影響はアジアを飛び越し、世界的に注目を集めることになる、「靖国」が日中韓と欧米で公開されれば、日本は戦争責任問題を本当に反省せざるを得なくなると人民日報の国際版サイトで語っておられます。
常識的に考えますに、戦争責任というのは、戦争を終結して、戦争に勝った国と負けた国がそれぞれ負うべき、持つべき責任、制裁、権限を明確に出し合い、当事国双方が折り合いの付く条件を明文化して講和を結び、国境を定めるという極めて政治的なプロセスです。戦争状態を終結し、当事国同士の国際関係を正常化していくというプロセスは政治そのものです。
いかがでしょうか。この見解に何か間違いはありますでしょうか。外務省、政務官、教えてくださいませ。
○大臣政務官(小池正勝君) 戦争責任という言葉は様々な文脈で用いられるものでございまして、一概に申し上げることは困難ではありますけれども、一般的には、戦争後、当事国間でいわゆる平和条約を締結することによりまして、戦争状態の終了、それに伴う領土問題及び戦争賠償等に係る問題等を解決しております。
戦後、我が国も当事国との間で平和条約等を締結して平和国家として歩んでまいりました。このような戦後の日本の対外政策が当時の政治指導者の重要な決断の下に進められてきたことは疑いのないところでございます。
○有村治子君 小池政務官、本当に簡潔な御見解を示していただいて、ありがとうございました。外務省を代表してのいわゆる常識的な見解だと思います。私が日々感じている感覚と何ら違いがない。つまり、今おっしゃったように、戦後の平和国家としての歩みをつくる原点でございます。まさに国際政治そのものでございます。
この政治そのものである戦争責任をテーマにし、しかも主張を一方的にしか論じていない映画が政治的喧伝意図がないと認識される理由を、尾山部長、私たちに分かる平易な、通常の常識人が理解できる日本語で説明をしていただきたいと思います。
○政府参考人(尾山眞之助君) 先生、北京週報の記事を御引用なさいましたけれども、この映画の審査に当たりましては、有限会社龍影から提出されました企画書、そしてその後完成した試写によって行っているわけでございまして、その結果としてその助成が行われたということでございます。
○有村治子君 質問に答えていただいておりませんが。
○政府参考人(尾山眞之助君) 北京週報にどのようなことを監督がおっしゃっているかは別として、審査は提出された書類によって行っておるということでございます。北京週報で行っているということではございません。
○有村治子君 政治的宣伝意図がないと認識される理由を私たちに分かる日本語で説明をしていただきたいと申し上げているんです。自民党の議員だけではなくて与野党を超えて、やはり議員の先生方にちゃんと分かるような、私自身に分かるような説明をしてください。
○政府参考人(尾山眞之助君) 本件の審査をゆだねられました日本芸術文化振興会の記録映画専門委員会においてそのような判断をしたということでございます。
○有村治子君 手続論を伺っているのではありません。さっきから二度も三度もその御説明は伺っています。
これが政治的意図ではないというふうに言い切られるその背景を教えてくださいと申し上げているんです。
○政府参考人(尾山眞之助君) 審査を行った専門委員会の判断について御説明をさせていただいておるわけでございます。
○有村治子君 その審査を行ったとおっしゃいますけれども、その先生方が見てくださったはずの最初の申請書類の、明確に、このチャンイ代表が、小泉総理の靖国参拝の政教問題を透視すると明確に書かれているんですよ。それが政治的意図ではないと断言されているわけですから、その理由を聞かせてくださいと聞いているんです。
いま一度申し上げます。手続を聞いているのではありません、お分かりになられると思いますが。
○政府参考人(尾山眞之助君) 私どもはその専門委員会の審査の結果について御説明を申し上げているわけでございまして、そういう宣伝的意図を有するものではないという判断をしたということを確認しておるわけでございます。ただ、どういう理由かということにつきましては、その間の議事録を作成しているわけではございませんので、これ以上の説明はちょっと難しいところでございます。
○有村治子君 議事録を作っていらっしゃらないんですか。
では、どうやってその審議の正当性を証明されるんですか。
○政府参考人(尾山眞之助君) 専門委員会の先生方が高い見地から審査をされた結果ということでございます。
○有村治子君 それをおっしゃると、専門委員のメンバーの中に入っていらっしゃる方の思想、信条を聞かざるを得なくなります。そのようなリスクを取られたのは尾山部長の答弁からだということを御承知おきください。
委員長、この点について私は、議事録で皆様お分かりいただけますように、再三再四、手続論を伺っているのではなく、これが政治的意図を持っていないと断言されるその背景を教えてほしいと。限られた時間なのに、この時間で随分浪費がありました。後に文化庁によって正式に文書でコメントをしていただけるよう、一週間以内の提出を求めたいと思います。是非御検討いただきたく、委員長にお願いを申し上げます。
○委員長(岡田広君) 後日理事会で協議をいたします。
○有村治子君 そもそも李纓監督は、元々は南京事件に関する映画を作りたいと思っていたと北京週報で答えていらっしゃいます。この映画のクライマックスでは、南京事件に関して、中国側から証拠写真として出されている写真の中でも捏造と断定されたり、現在も学術界からその信憑性が著しく問われているような写真が、あれよこれよとコラージュのように出てきます。これはまさに特定の政治的意図の最たる証左ではありませんか。
○政府参考人(尾山眞之助君) 日本芸術文化振興会から、映画で使用されている写真や映像の真偽を判定する立場にはないので、そのことについては審査していないということを聞いておるところでございます。
○有村治子君 とぼけないでいただきたいと思います。その写真が本物ですか、偽物ですかなんて聞いていません。そのような信憑性が極めて疑われている、学術界でも問題になっているあれを次から次へと出してくる、これは特定の政治的喧伝意図の最たる証左じゃないかと伺っているんです。
○政府参考人(尾山眞之助君) 日本芸術文化振興会は、そういったことの内容については審査対象としていないということを言っておるところでございます。
○有村治子君 済みません。いやしくも専門委員の方々は給料、報酬を得てこの審査をしていらっしゃるんです。そして、この最後の映画のクライマックスというのは、映画人ならずも私たちも、みんなクライマックスは大事だというのは分かっているんです。そこに、南京事件でこれは捏造写真だって明らかに言われているもの、また疑義が疑われるものが次から次へと出てくる、そこを審査していないで、どこを御覧になっているんですか。
○政府参考人(尾山眞之助君) 写真、映像の真偽を判断する立場にはないので、そのことを審査対象としていないということを申し上げています。
○有村治子君 その写真の真偽なんて聞いていません。その真偽が疑われる写真を次から次へと出しているところは政治的意図だと私は思うんです。そうじゃないと断言されるその理由を述べてくださいと先ほどから申し上げています。
○政府参考人(尾山眞之助君) この判断をいたしましたのは、再々で恐縮でございますけれども、専門委員会でございまして、その間の議事録等は作成されておりませんので、これ以上の答弁はしかねるところでございます。
○有村治子君 役職上答弁者に立たされている尾山さんの苦しさも私は理解しないわけではありません。しかし、これは文化行政の、ちゃんとした税金の、元々の原資となっている予算の執行がちゃんとなっているかと、国民の皆さんの代表として私たちが本当に与野党を超えて正式な委員会で検討をしている、質問通告も明確にしております。その中でそんなに確信犯としてはぐらかされるというのは国会を軽視しているとしか私には聞こえません。
この映画が助成金の対象として選ばれたことに疑問を呈している人々は、国民の貴重な税金の適正な予算執行について関心を持っている私たち議会人だけではありません。納税者、世論に多くの読者を持ち、世論形成にも大きな影響力を持つ大手の週刊誌も、この助成金の交付を疑問視され、問題視され、複数回にわたり疑義を呈しておられます。
私の手元には、週刊新潮が二度にわたって、この反日映画「靖国」は日本の助成金七百五十万で作られたという記事がございます。読んでみます。靖国神社のドキュメンタリー映画が中国人監督によって作られた。中国が反日プロパガンダに用いた南京事件の捏造写真も挿入され、反日映画と言わざるを得ないのだが、何と文部科学省所管の独立行政法人日本芸術文化振興会から助成金が出ているんだというふうに書かれています。
事前書類審査の段階で、映画作成者の政治的意図は申請書で明言されております。そこでチェックをしなければならない、その瑕疵はあると今でも私は思っていますが、たとえそのチェックを専門委員の先生方全員が万が一見過ごしてしまったとしても、この助成金を受ける映画を選考する際の基本方針を遵守するために、完成作品において特定の政治的、宗教的活動を代弁するような政治的意図を有するものが含まれていないかどうか、しっかり試写確認をした上で助成金交付を決定するというのは尾山部長がおっしゃったとおりでございます。
この週刊新潮の記事にも、芸術文化振興会は、映画「靖国」に対する助成金に対して、記録映画は社会性、政治性などのメッセージ性が強い作品が多く、「靖国」についても相当議論されたようです、しかし専門委員会で、助成対象として採択され、完成確認でも疑義があったわけではない、企画書から大きく違っていない以上、作家性を尊重する観点から、ここがおかしい、あそこが修正してほしいとは言いません、基金部コメントというふうに週刊新潮、去年の十二月二十日号に書かれています。
ここに記載されていることは事実でしょうか。もし見解が違うなら、明確に述べていただきたいと存じます。
○政府参考人(尾山眞之助君) 週刊誌の記事の中の、独立行政法人日本芸術文化振興会から助成金が支出されていることは事実でございますし、また、これに対して同法人が取材した記者に説明した内容に誤りはないと聞いておるところでございます。
○有村治子君 週刊新潮に書かれていますように、助成金交付映画の選定に当たっては、何度も慎重な検討を行ったというのは果たして事実でしょうか。相当議論されたと御発言にありますが、選定に当たる専門委員の先生方は何回会合を持たれたのですか。この映画の申請を審査するために開催された会合の正確な日時、時間を教えてください。質問通告はしてあるはずです。
○政府参考人(尾山眞之助君) 本件につきましては、平成十八年の九月十四日の日に三時間にわたって審議がされております。その審議の前に、申請された書類を各委員の先生方がよく読んでいらっしゃるところでございます。
○有村治子君 つまり、相当議論されたとおっしゃっていますが、実際にこの映画「靖国」も含めて十六本の映画の審査をしたのは九月十四日の三時間だけでございますね。(発言する者あり)十六本です。十六本のうちの四本を選ばれたわけですが、実際に先生方が意見交換をしたのはこの三時間だけですね。ここではどんな議論がなされていたんですか。
○政府参考人(尾山眞之助君) 専門委員会では、政治的、宗教的宣伝意図を有するものは除く等が定めてある助成金交付の基本方針に基づき、また、活動の目的及び内容が優れているか、社会的に開かれているか、あるいは過去の実績から推測して実現可能であるか、予算や経理が適正であるかなどの評価の観点により審査が行われたと聞いております。
ただ、専門委員会の議事録につきましては、先ほど来申し上げておりますように作成されておりませんので、具体的な審査内容は承知していないところでございます。
○有村治子君 こんなに大事なことに議事録も記録の一つも残していない、これは恣意的ですよと、このように非難されたときに、日本芸術文化振興会の判断の正当性をどう立証されるおつもりでしょうか。尾山部長も振興会御自身も困られることだと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(尾山眞之助君) 審査につきましては、専門家の先生方に専門的な見地から自由に審議していただくわけでございますし、また、個々の審査の過程は公開しない取扱いにしておりますので、通常このような場合は議事録は作成しておりません。
○有村治子君 議論は公開できないとおっしゃいますが、では、国民の知る権利を守るために国民の代表として議会に送っていただき、国権の最高機関である国会の公式な参議院の内閣委員会で、岡田委員長の指名の下、質問通告もしっかりとした上で私は質問を展開しております。すなわち、私が取るべき手続は正当にすべて踏まえた上での公的な質問でございます。
この選考に当たられた専門委員の方々は、ボランティアでされているのではありません。公的機関の要請に基づいて報酬の手当を受けられて専門委員となっておられるのですから、そのときにどんな議論があったのか、これだけ国民的な、マスコミも交えてこれだけの議論があるんですから、そのときの議論がどんなものであったのか参加者にヒアリングをすればいいことだと思いますが、国権の調査権をそんなに軽々しく軽視していただくのは極めて残念だと思います。いかがでしょう。
○政府参考人(尾山眞之助君) 議事録を作成していないという事実を申し上げているところでございます。
○有村治子君 通告してからでも、昨日の夜でも電話で皆様に確認されればいいんじゃないですか。私たちは正式な調査権を行使しているんですよ。
○政府参考人(尾山眞之助君) 確認できた範囲で正確なところをお答えさせていただいたところでございます。
○有村治子君 正確な情報は何も出ていません。先ほどおっしゃっていただいたのは、基準を読んでいただいただけでございます。
コメントを求めます。
○政府参考人(尾山眞之助君) 現時点で確認できていることを御説明申し上げました。(発言する者あり)
○有村治子君 副大臣もおっしゃっていただいているように、何の説明にもなっていません。どのような議論が行われたのか書面によって提出をしていただきたいと、御検討いただきたいと存じます。文書でお願いいたします。
週刊新潮に基金部が答えているように、完成確認でも疑義があったわけではないというのは本当でしょうか。作品が完成してから試写をされた段階で政治的、宗教的宣伝の意図について疑義が全く呈されないとしたら、それ自体、一体何をチェックされているのだろう、本当に専門委員の先生方は目を開けて、助成金交付選定基準に照らし合わせてこの試写を審査していただいたのですかと言わざるを得ません。
大事な税金が原資となっている予算の執行です。文化芸術振興の名の下、七百五十万円の助成をするにふさわしい映画かどうか、選定基準が満たされているかどうかのファイナルチェックともいうべき完成後の試写は、いつどこで行われ、選考に当たった専門委員六人のうち何人の方がこの映画を最初から最後まで見られたのでしょうか、また欠席されたのは何人ですか、教えてください。
○政府参考人(尾山眞之助君) 完成試写会は平成十九年の三月三十日にtogen虎ノ門試写室において行われております。専門委員の方は六名中四名の方が出席をされ、確認をされておるところでございます。
○有村治子君 この試写会後、異論が出なかったのはある意味当然なんです。試写会後の専門委員の先生方の御意見を聴くような会合は、その後一切開かれておりません。試写会が終わって、はい、さようならということですね。
そもそも、この完成後の試写をすることに日当は一切払われていないのです。これでは、日給も出しません、見るも見ないもボランティアですからねということになり、ファイナルチェックの機能を果たすべき完成品の試写を履行されなかったということにとがめることはできませんし、会議も意見交換も開かれていません。
このことで本当にファイナルチェックをしたとおっしゃれるんですか。
○政府参考人(尾山眞之助君) 四人の専門委員の先生方が完成試写会を御覧になった上で、助成を取りやめるような重大な変更はないということを確認していただいたというふうに聞いておるところでございます。
○有村治子君 その確認を一人一人取っていませんね。例えば、ファイナルチェックの機能を果たすべき完成品の試写をしていない専門委員は二人いらっしゃるんですが、その方々に対して完成ビデオをその後送付して、あるいはCD―ROMを送付して、DVDを送付して意見を聴くというプロセスも取られていません。つまり、ファイナルチェックとしての試写の後、御意見どうでしたか、かなっていましたかという意見の確認はなされていません。それでもファイナルチェックしたとおっしゃるんですか、しかも日当を払わずに。
○政府参考人(尾山眞之助君) 専門委員会の六名の先生方のうち四名の先生方は御覧になって確認をされているわけですので、ファイナルチェックと言ってよろしいかというふうに考えております。
○有村治子君 ですと、実はこの問答というのは、私たちのみならず多くのマスメディアが注目をしているんです。この問答、ちゃんちゃらおかしいということは、私たちが判断するまでもなくマスコミによって皆さんが知ることになられます。そうすると、文化行政の信頼が揺らぐわけですね。私はそこを心配しているんです。
つまり、企画段階での書面での申請段階は審査するけれども、実際の映画の完成品、いわゆる出口の審査はなされていない、つまり放映はしたけれども、その後どうでしたかという確認は全然取っていない、出口の調査はしていないというそのそしりを逃れない現状ですが、今回、企画書段階から完成、上映までにという状況ですが、それに対してどうやってそのファイナルチェックをした先生方の意見を集めたと言えるんですか。
○政府参考人(尾山眞之助君) 三月三十日の完成試写会の場において確認をされているということを聞いておるところでございます。
○有村治子君 つまり、何もエビデンスがないということですね。
先ほどからエビデンスを一切出していただいておりません。試写が行われて、その中に四人が参加したというだけで、その後先生方が何を見たのが、何がいいと思って、何が違和感を感じたのかという意見の聴取は行われていません。つまり、企画段階での申請は審査するが、出口はしていない。先ほど尾山部長が強弁された、ちゃんとファイナルチェックしています、完成の試写もやっていますというのがいかに苦し紛れの答弁かというのが露呈したわけでございます。
今回、企画書段階、つまり助成金の申請段階から完成、上映までに変更がなされ申請がされたというものにはどういうものがあるでしょうか。
○政府参考人(尾山眞之助君) 助成金の交付内定後、変更理由書が二度提出されておるところでございます。一度目は平成十八年の十二月でございまして、上映時間の変更、これは百八十分であったものが百二十分にするということと、それから二つ目は制作スケジュールの延長ということで、当初八か月を予定しておったものを九か月にするということでございます。それから、二度目は平成十九年の三月でございまして、一つは出演者の変更、二つ目は共同制作者の変更、三つ目は他からの助成金の追加、四つ目は協賛会社の取消しの四点でございます。
いずれの変更につきましても、完成試写において専門委員が内容を見て、助成決定に影響を及ぼすような変更ではないと確認したと聞いておるところでございます。
○有村治子君 スケジュールや上映時間の変更というのはよくあることだと私も思います。
今おっしゃっていない中でも、映画のタイトルが変更されていますね。それから、出演者も変わっています。共同制作者も変わっています。御覧になっていただきますように、このパンフレットの右側のコラムにありますように、共同制作として書かれているのは、チャンイさんの会社と北京電影学院、青年電影制何とか何とか、北京中何とか何とか有限公司ということで、全部これチャイニーズですよね。これが日本映画なんでしょうかね。つまり、映画のタイトル、出演者、共同制作者、協賛にも変更を来しています。映画の屋台骨そのものが変わっているんですね。あれもこれもと変わっているんですね。
それで、本名で申請しなければならない申請代表者、このチャンイ代表の、代表取締役の名前そのものが、本名が変わっているんです。そして、いつの間にか制作総指揮者、チョウウンキと読むんでしょうかね、旧名チャンイということで、申請者の本名までが変わっているんですね。
このことに対して変更がほとんどなかったということを言い切れるんですかね。
○政府参考人(尾山眞之助君) 先ほど変更点について私から御答弁させていただいた以外の変更については、大変恐縮ですが、私、現在承知いたしておりません。
○有村治子君 済みません、私が把握しているだけでも、しかも私がこれを本格的に調査したのは三日前でございます。質問が決まってからでございます。それでも私はこういう情報を入手しているんです。答弁される方がそれを把握していないというのは、事務方のスタッフさんも含めてやっぱり答弁者は、一生懸命チームを守ろうと頑張ってくださっているんですから、御協力いただけますよう、調査権に御協力くださいませ。
私は、靖国神社賛成派、反対派というレッテルを付けること自体くみしておりませんけれども、企画段階では靖国神社に対して賛否両論を題材とするというふうにしていた文書が、実際に十九年の三月に出された変更理由書によって、いわゆる靖国支持者の主張はこの映画の対象にしないことが明確に申請をされています。この時点で、この映画が完全な反靖国となることが決定的になったものですが、これらの大規模な変更が行われても問題ありという認識をだれも専門委員の方々は一切されなかったんでしょうか。反靖国となることが決定的になって、これは中国政府の歴史認識や主張そのものを取り上げる映画とこの時点で決定的になったわけですが、これに疑義を、おかしいな、えっ、何かあるんじゃないかなと思われた人がだれもいなかったんですか。
○政府参考人(尾山眞之助君) 完成試写におきまして専門委員の先生方が内容を見て、助成決定に影響を及ぼすような変更ではないと確認したということを聞いておるわけでございます。
○有村治子君 試写会を見てとおっしゃいますけれども、見た後に意見は聴いていない。つまり、エビデンスを全然出していないんですから、それをロジックにされるのは御遠慮いただきたいと思います。ほかの先生方も説得力がないということをおっしゃっているんですから。
別の聞き方をします。
平成十七年、二〇〇五年は終戦六十周年でございました。終戦四十周年、五十周年、六十周年となる一九八五年、一九九五年、二〇〇五年、つまり西暦の一けたが五になる年は決まって中国、韓国が歴史認識を外交カードとして日本を揺さぶらせる戦略に来ています。そして、私たち自身も、歴史に向き合う機会ということから逃げることは全く許されません。しかし、この平成十七年、大騒動があった二〇〇五年の翌年に申請が出されているんです。こんな当たり前の、みんなが理解をしている政治的意図が見抜けないような、社会人としての常識的感覚がない人ばかりが専門委員になっていらっしゃるんですか。
○政府参考人(尾山眞之助君) 専門委員の先生方の判断としては、これは政治的宣伝意図は持たないという判断をなされたということでございます。
○有村治子君 じゃ、専門委員の先生方、お給料出ていますから、どうしてそう考えられるのか、どうしてこれが政治的意図がないというふうに断言できるのか、その根拠を示していただきたい。文書でお出しいただきたいと存じます。
この専門委員というのはどういう基準で選ばれた人たちでしょうか。
○政府参考人(尾山眞之助君) 映画について幅広い学識を有する方の中から、日本芸術文化振興会において選任し委嘱をしておるものでございます。
○有村治子君 幅広い見識を有しということでございますが、専門委員の一人であるY氏、この方の信教の自由、思想の自由ということを尊重して、私は昨日は通告で明確にそちらにお伝えしてありますけれども、Y氏とこの場では言わせていただきましょう。
Y氏は映画人九条の会のメンバーであり、その旨の発信をされていることを日本芸術文化振興会は御存じでしたか。九条の会というのは、御承知のとおり、憲法九条をめぐって護憲という立場で政治的メッセージを明確に打ち出し活動をされていらっしゃる団体です。その映画人九条の会のメンバーであること、御存じでしたでしょうか。
○政府参考人(尾山眞之助君) 日本芸術文化振興会におきましては、専門委員の委嘱の際に、先生御指摘の専門委員の方が御指摘の会のメンバーであることは承知していなかったと聞いておるところでございます。
○有村治子君 先ほども申し上げたように、私がこの調査に乗り出したのは三日前でございます。こんなことさえ知らなかった。私たちがインターネットでも検索できる情報を日本芸術文化振興会は把握もしないで専門委員を選んでいらっしゃるんでしょうか。
専門委員会の中立性、もちろんYさんにも思想の自由はあります。そして、それは尊ばれなければなりません。しかし、常識に照らして公正な立場で審議をされたとは到底思えない判断が次から次へとまかり通っている現状をかんがみますと、このY氏の政治的、思想的活動が当該映画の助成金交付決定に影響を与えたのではないかという国民の皆さん、私たちの疑念を振興会の公的責任として払拭していただきたいと思います。どうか払拭してください。御意見をお願いします。説明をお願いします。
○政府参考人(尾山眞之助君) 専門委員会は、基本方針や評価の観点を基に六人の専門委員会が合議の上で審査が行われ助成が決定される仕組みを取ることで、一人の委員の意見が大きく影響することがないような仕組みにしているということを聞いておるわけでございます。
○有村治子君 つまり、思想的には大きな信念を持っている方が入っていらっしゃったということで、その影響を与えたのではないかという疑念を払拭するには当たっていない、そんなお答えだと私は認識しています。
そして、この「靖国」のパンフレットにも書かれていますけれども、そして知られざる事実がある、靖国神社の御神体は日本刀であり、昭和八年から敗戦までの十二年間、靖国神社の境内において靖国刀が鋳造されていたというふうに書かれていますけれども、これは事実誤謬でございます。知られざる事実があるというふうに言って、靖国神社の御神体は日本刀であるというふうに主張されていますが、この認識自体が誤謬なんです。事実誤認でございます。これは私自身が靖国神社の広報に問い合わせています。神社で大切にされていらっしゃる神剣は、一般的に世に言う日本刀、片刃でワンエッジですね、片刃で反りのある日本刀とは形状も異なっておりまして、この御神体は日本刀ではありません。
この誤謬を知られざる事実としてドキュメンタリーとして豪語されること自体が大変に遺憾なことでございます。もちろん、中国の監督が外国語である日本語で基礎事実を理解するのは難しいのかもしれませんが、この御神体について、靖国神社に対する事実確認や問い合わせも一切されずに、この事実誤認をドキュメントと称し広く喧伝されていること自体が欺瞞だと思いますが、やはり文化的考証などの前線に立たれるはずの文化庁ではないんですか。この点、コメントください。
○政府参考人(尾山眞之助君) 日本芸術文化振興会の専門委員会においては、映画全体の企画を審査して助成を決定されたということでございます。
○有村治子君 この誤謬に対して、こんな誤謬をドキュメントだというふうにおっしゃっている。文化の考証をしていかなきゃいけない前線の文化庁がこのようなコメントをされなきゃいけないということ、これが周知の事実になって信頼を失うことを私は極めて残念だと思います。
映画の中で最も多くの時間を割かれて登場される刈谷直治さんは、靖国刀を作っていた現役最後の刀匠、刀のたくみでございまして、現在九十歳の御高齢です。美術品として純粋に靖国刀匠、たくみのドキュメンタリーを撮りたいという若い中国人の青年の申出に、刀を作る自らの映像を撮影することは承諾され、これが私の現役最後の仕事になるなと覚悟を決めて協力をされました。映画パンフレットによると、キャストというふうに刈谷さん書かれていますが、この刈谷さんは実際には本映画でキャストになることを全く知らされておらず、このことを承諾されていないばかりか、完成品の映画を見る機会すら与えられていません。
いっとき、進行過程での映像を御覧になって、当時政治問題化していた小泉総理の参拝映像や終戦記念日の靖国境内の政治的喧騒の映像と交ぜ合わせて刈谷さんの刀を作る映像が交錯されて使われていることに違和感を覚え、ここからです、刈谷夫妻は不安と異論を唱えられました。
すると、刈谷さんの御自宅に赴いた李纓監督と助監督の中村さんは、この映画には日本の助成金が出ているし、助成金を受けているというそのマークも付いているから大丈夫ですよと夫婦をなだめていらっしゃいます。助成金が公的お墨付きとして使われ、刈谷さん本人がキャストに仕立て上げられる、本人は嫌がっているんです、キャストに仕立て上げられることを承諾するよう、助成金のマークが入っているから大丈夫ですよ、日本政府も助成しているんですよという説得の材料になってしまっています。
このような経過から、最終作品は刈谷氏の善意を踏みにじっており、刈谷さん夫妻はこの映画において刈谷氏の肖像が入ることを全く承服しておらず、作品から刈谷さんの映像を一切外してほしいと希望をされています。これは、私自身が一昨日、平成二十年三月二十五日、刈谷さん本人と御確認を取りました。
このパンフレットに載っている制服姿の青年、この青年ですね、この青年は現役自衛官であり、彼が靖国神社に参拝しているところをこの映画「靖国」を作った人たちが無許可で撮影をし、その映像が無許可でこの映画に使われ、このパンフレットにおける掲載がされていることもこの自衛官の方は一切知らなかったんです。この現役自衛官の方がたまたま靖国神社にお参りしたときに勝手に無許可で撮られた肖像権は全く守られていないという状態が今も続いています。
事実誤認をドキュメンタリーと主張し、十月十七日の霊璽奉安祭を始め、撮影が禁じられている場所や時においても撮影し、知らない間にキャストに仕立て上げられた刈谷さんのお気持ち、希望を無視して上映を重ねるなど、手段を選ばない取材、撮影によって肖像権をじゅうりんされた人々との間に数々のトラブルを起こしているこの映像を文化庁が芸術文化振興の名の下で公金を使ってまで後押しをすることが果たして適切なんでしょうか。
○政府参考人(尾山眞之助君) 日本芸術文化振興会における映画の助成におきましては、企画書の内容を審査基準に照らして審査し、完成試写会において審査内容と大きな違いがないかを確認しているところでございますけれども、個々の映像がすべて肖像権の問題をクリアしているかどうかまでは審査対象としていないということを聞いておるところでございます。
○有村治子君 個々の肖像権じゃないんです、メーンの肖像権なんです、刈谷さんもこの人にしても。本人は承諾していないのにキャストって書かれているし、本人の映像が使われているんですよ。のべつ幕なし、無許可のことを繰り返している映像なんですよ。これが文化振興なんですかね。これが日本の映画なんですかね。
そして、今おっしゃるその日本映画の助成ということでございますが、配付資料のように、日本映画とは、国民、日本に永住を許可された者又は日本の法令によって設立された法人によって作られた映画を指しています。つまり、日本の法令によって設立された法人が、たとえ構成員がすべて外国人でもオーケーということになります。ノルウェーの人々によって構成される法人がケニアのキクユ族を撮った映画も日本映画というカテゴリーになってしまうんです。不思議な定義だなと思います。
この問題を契機に、助成の対象となる日本映画の定義を見直しして、フェアに公平に助成対象を審査して、信頼される文化行政になるよう出直された方がいいと思います。そして、そもそも、政治的、宗教的宣伝意図がないことという助成金の申請要件を満たしていない映画を助成してしまったことにかんがみ、この助成金返還の是非をいま一度検討されることを希望します。
文部科学大臣政務官のお答えを希望いたします。
○大臣政務官(保坂武君) 大変御指摘をいただいているところであります。
ただいま御質問をされた最後のところの補助金の問題につきましては、十分協議はしなければならぬところもあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、映画「靖国」については、私ども、芸術文化振興基金の助成に当たって、独立行政法人の振興会において所定の手続を従い、審査を行ってきているところであります。
十分、本内閣委員会で有村先生の御教示や御指摘、またこれらのやり取りを聞いておりまして、今後、内容について適切な審査を努めるよう努力をしなければいけないなと、こう思っているところであります。
○有村治子君 今政務官としての御答弁をいただきました。
政治家としての先生、今の答弁を聞いていて、いかにひどい手続で、いかにずさんな審査をされているかというのが明確にこの一時間でなったと思います。その御感想、ちゃんちゃらおかしいということが次から次へと出てきているんですね。このやり取りを聞いていらしての御感想を求めます。
○大臣政務官(保坂武君) 文化行政にわたりまして、特に映画は最近、世界的にも国民の中でも普及されるものでありまして、今のやり取りの中で、これの審査については十分、所定の手続等々検討するところは大変あるというふうに個人的には思っております。
○有村治子君 先ほどの政務官の御答弁に、本当に真摯に聞いていただいて、この助成金の要件を満たしていない映画を助成してしまったことにかんがみて助成金返還の是非を検討されることを希望して、それも重要な観点だというふうに私は聞きました。
どうかこの内閣委員会で、その検討していただいた結果を報告をしていただきたいと思います。これに関しては私自身の判断ではいけませんので、委員長始め、後ほど理事会で御検討いただけたら有り難いと存じます。
○委員長(岡田広君) 後日理事会で協議をさせていただきます。
○有村治子君 今回のことに関しましては、国民としても、文化行政を応援したいと思っている議会人としても極めて残念なことだと思っています。やはり正式なフェアな審議をしていただきたいなと思っております。
しかし、芸術文化振興会の名誉のために私は申し上げます。今回のことは極めて遺憾でございますが、この芸術文化振興会は、国立劇場で歌舞伎や文楽の公演を後押ししたり、あるいは琉球の舞踊、音楽を上映する国立劇場おきなわを持ってみたり、あるいは国立能楽堂をしっかりと運営されたり、本当にいい活動をされているんです。日本人の文化をしっかりと応援していくように一生懸命やられているんですね。
やはり、今回の助成金の原資は税金なんです。公益に資する活動をするという信頼があってこその文化行政です。国民から慕われて、支持されてこその文化振興でございます。この原点をしっかりと心に刻んで、今の検討を再検討していただきたいと思っております。
最後に、私自身、今までの質問はすべてロジックだけでやってまいりました。私自身、靖国神社に対してどう思っているかというと、右翼も左翼もないと思っています。どんな立場を取るにせよ、もちろんそれは自由です。しかし、この靖国神社というのは、本来、御霊と静かに向き合う場所で、国の未来を信じて命をささげられた御霊や、その人、お父さんに一度も抱かれたことのない子供たちがお父さんの無言の遺骨を抱かねばならなかった、そんな方々がもう六十歳、七十歳になって、唯一、お父さんに会える、好きだった恋人に会える、あるいは息子に会えるというところのその遺族のお気持ちに静かに心を添わせる人間としての常識は持たねばならないと思っています。やれ反対だ、やれ賛成だとプラカードを片手に意見の異なる相手をそれぞれの数の論理や声のボリュームで威嚇して、思想的に相入れない相手をにらみつけて中傷合戦をするイデオロギー論争の場であり続けるというのは、極めて御霊やあるいは御遺族に対して不遜なことだと思っています。そういう意味で、この映画を助成をしてしまってオーソライズしてしまった文化行政の過失というのは決して小さくない、極めて残念だ、私たち、裏切られたなという気持ちが本当にしています。
この映画の助成金選考の轍を教訓に、国民から信頼される文化行政、助成金の適切な執行が行われることを切に願って、私の質問を完了させていただきます。ありがとうございました。
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