平成20 年5 月14 日

映画「靖国YASUKUNI」についての声明

協同組合日本映画製作者協会

 5 月3 日から都内で劇場上映が始まった映画「靖国YASUKUNI」は、本来 4 月12 日より都内4 館で上映予定であった。今回この映画を襲った上映中止ないし延期という事態の発端は、稲田朋美衆議院議員から文化庁に対する試写要求からであった。芸術文化振興基金による製作支援がその内容により不適切ではないかとの疑義によるものであり、公開前に政治的圧力とも思える個別試写を要請したものであった。結果、全国会議員と秘書を対象とした試写を配給会社が行った。その後、稲田朋美衆議院議員および有村治子参議院議員らによる、芸術文化としての映画に対する「国政調査権の行使」という発言に至る。まるで戦前に有った検閲制度のようであり、有ってはならない事である。そのような経緯の中で、直接・間接に劇場及び配給会社に上映阻止の圧力があり、上映館及び封切り日を変更せざるを得ない結果になった。このことは近年に無い異常事態であり、我々映画を製作するものとしては看過出来ないものである。

 日本映画は100 年の歴史を数え世界で誇れる作品を数多く排出してきたが、その根源は多様な作品を生み出してきたからに他ならない。その土壌は、多くの映画作家が思想信条を自由に表現し、大衆娯楽としても受け入れられてきたところにある。
 映画は製作するだけでは完成しない、観客が観賞する事で完結する。観客に映画が届かないのであれば映画は完成していないことになる。
 映画が文化芸術と法で規定されたのは数年前であり、その後日本映画振興の様々な施策が主に文化庁および芸術文化振興基金などにより行われ、その結果行政による映画振興策は邦画・洋画のシェアの逆転にも大きく貢献している。文化庁および芸術文化振興基金には、この度のような政治的圧力に屈することなく、毅然として今後も芸術文化としての映画振興を推進するよう、強く要請する。
 また同時に我々映画製作者も、何者にも臆せず自由な表現により映画製作を続けていくことをここに表明するものである。

 


協同組合日本映画製作者協会 http://www2.odn.ne.jp/jfma/
会見の模様は⇒OhmyNews「まるで戦前の検閲」―『靖国』問題に協会が声明(http://www.ohmynews.co.jp/news/20080515/25084)