映画『靖国』上映に当たって
表現の自由を守り活かすための声明
1 ドキュメンタリー映画『靖国 YASUKUNI』の上映が5月3日から開始された。上映は大きな混乱もなく行われている。しかし同映画は一時上映中止の事態が生じた。これは表現の自由の危機につながるものであった。
私たち自由法曹団東京支部は、東京の弁護士から成る法律家団体として、表現の自由のため奮闘する決意を表明する。
2 今回の上映中止の発端は一部国会議員が映画の内容を問題視し、文化庁を通じて国会議員を対象とする試写会を求めたことに起因する。また、別の国会議員は映画の出演者に直接連絡をとったとされ、これも上映の危惧を深めた。
しかし、国会議員は憲法尊重擁護義務を負う立場にある。その国会議員が単なる論評にとどまらず試写会を要求したり、出演者に連絡を取ることは、単なる私人としての行為とみることなどできるものではない。表現の自由の趣旨から、これら国会議員の行動は批判の対象とされるべきである。特に、今回の行動をとった国会議員の中に弁護士資格を持つ者がいたことは、基本的人権の擁護を使命とする者として重大に受け止めなくてはならない。
表現の自由をまもるためには、これを脅かすものとたたかわなければならない。このことは日本国憲法が、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」(12条)、「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」(97条)と述べている趣旨でもある。
3 近時、表現の自由にとって重大な事態が相次いでいる。
日本教職員組合の教研集会の会場使用をホテルが拒否したり、最高裁がビラ配布を住居侵入罪で有罪にするなど、表現の自由にとり憂慮することが続いている。それだけに映画『靖国』が上映されたことの意義は大きく、表現の自由をまもるために努力されている方々に敬意を表する次第である。
私たち自由法曹団東京支部も、表現の自由を守り活かしていくため、そしてこの映画が1人でも多くの人々に鑑賞されるため、尽力することを誓うものである。
2008年5月8日
自由法曹団東京支部
支部長 島田修一
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