映画「靖国」をめぐり、「映画人九条の会」への不当な非難的言及に抗議する。
日中合作の長編記録映画「靖国 YASUKUNI」に対し、自由民主党の稲田朋美衆議院議員がクレイムをつけたことに端を発し、4月公開予定の映画館が次々と上映を中止する異常な事態が起きています。
私たち日本国憲法第9条を守る一点で集まる「映画人九条の会」でも、このような事態が憲法の基本的人権、表現の自由にかかわる重大事として注目してきましたが、会の性格上、個々の問題で行動を起こすことは控えてきました。
ところが自由民主党の有村治子参議院議員が、3月27日の参院内閣委員会で映画「靖国」問題を取り上げ、映画「靖国」が日本芸術文化振興会の助成を受けた経緯を追及、とくに助成承認にかかわった専門委員(審査員)の思想・信条にまで立ち入り、一委員が「映画人九条の会」のメンバーであることを問題にしました。
有村議員は、「映画人九条の会」を特定の政治的イデオロギーに立つ活動であると断じ、「映画人九条の会のメンバーであることを知らないで選んだのか」「(その委員の)政治的、思想的活動が当該映画の助成金交付決定に影響を与えたのではないかという疑念を払拭せよ」などと執拗に文化庁に迫り、専門委員として審査に当たったことにあからさまな疑義を呈したのです。
憲法99条が定める通り、政治家や公務員には憲法擁護義務があり、そして国民には憲法を守っていく責任がありますが、その立場を表明しただけで特定の政治的イデオロギーに立つ活動だと断じ、国会で問題にするとは、まさに異常な事態です。これは、1940年代末から1950年代前半にかけてアメリカの下院非米活動委員会が強行した“赤狩り”=ブラッククリストづくりに匹敵する暴言です。
映画「靖国」の上映中止問題全体を論じることは別にして、私たち「映画人九条の会」に対するこのような理不尽な言及と非難を黙視することはできません。
有村議員のこのような非難は、有村議員、稲田議員らの映画「靖国」に対する攻撃と圧力が反憲法的、反民主主義的な本質を持っていることを自ら暴露するものです。
そもそもドキュメンタリー映画は、社会が直面している問題を取り上げて、作者の視点から描くものです。それを偏っているとか、中立であるかどうかということを問題にするのは、映画の本質を分かっていないということです。
私たち「映画人九条の会」は、有村議員の不当な非難的言及が持つ反憲法的な危険な意図について広く注意を喚起するとともに、有村議員の非難的言及とこれに同調する動きに強く抗議します。
2008年4月10日
映画人九条の会
代表委員
大澤 豊(映画監督)、小山内美江子(脚本家)、神山征二郎(映画監督)、ジャン・ユンカーマン(ドキュメンタリー映画監督)、高畑
勲(アニメーション映画監督)、羽田澄子(記録映画作家)、降旗康男(映画監督)、山内 久(シナリオライター)、山田和夫(映画評論家)
事務局長
高橋邦夫(映演労連委員長)
運営委員会一同
連絡先
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