映画『靖国』への圧力・上映妨害に抗議する民放労連委員長談話

2008年4月7日

日本民間放送労働組合連合会
中央執行委員長 碓氷和哉

 4月12日に公開予定だった日中合作のドキュメンタリー映画『靖国 YASUKUNI』が、政治的圧力や上映妨害の攻撃などによって上映を中止する映画館が続出し、一般公開ができない状況となっている。表現活動に従事する労働者である私たちとしても、このような事態が起きていることを深く憂慮するとともに、映画の上映中止を求めて圧力をかけている勢力に対し、強い怒りをもって抗議する。

 憲法21条は一切の表現の自由を保障しているが、これは同時に「何人も他者の表現の機会を奪う自由はない」ことを意味していると解される。映画の内容について批判があるのであれば、上映された映画に対して言論で批判すればいいことであり、上映を妨害して映画の存在自体を社会から抹殺しようとするのは、民主主義社会のルールを踏みにじる実に野蛮な振る舞いだと言わざるを得ない。

 とくに、国会議員など政治的権力を持つ者は、表現の自由を守る強い責任を有しているはずで、この『靖国』をめぐって、上映前から映画の内容を問題視して「試写会」を開催させたことなどは、憲法が禁止している「検閲」に相当するものとして厳しく指弾されるべきである。試写会を求めた国会議員などからは「政治的中立性が疑われる映画に対して政府出資法人から助成金が出されたこと」を問題にする意見が聴かれるが、映画の政治性を判断して国家権力が助成の可否を決めるような行為こそがまさに「検閲」に他ならないことを、これらの議員たちは理解していないのだろうか。

 香港国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞するなど海外でも高い評価を得ているこの『靖国』が、国内でまともに上映できないことは国際社会において誠に恥ずべき状態であり、こうした映画を何の懸念もなく鑑賞できる環境が一刻も早く求められる。私たちは、映画の上映を妨害する勢力に対して改めて強い抗議の姿勢を示すとともに、全国の映画館をはじめとするすべての映画関係者に、国内で『靖国』が上映される場が失われることがないよう最大限の努力を求めたい。

以上

 


日本民間放送労働組合連合会(民放労連)http://www.minpororen.jp/