【声明】「上映中止」の不当な圧力に屈せず、表現の自由を守ろう
日本在住の中国人監督が撮影した、ドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」を、自民党国会議員が攻撃し右翼団体が妨害するという動きのもとで、いま、東京や大阪の映画館において上映中止が相次いでいる。
表現や言論の手段の一つである映画が、抗議や嫌がらせの悪質な妨害によって国民の目に触れることなく葬り去られようとする現状は、憲法の保障する「表現の自由」を侵害し、民主主義の根幹を揺るがす重大な事態であり、私たちは深く憂慮するものである。
本問題の発端は、一部メディアがこの作品を「反日映画」としてキャンペーンを始め、稲田朋美氏ら自民党国会議員が、非難の口火を切り自由な映画活動への不当な介入をおこなったことにある。これらの背景には、自分たちの意に沿わない作品を敵視し、あげくに表現・言論の封殺を企て、この国が犯した侵略戦争の過ちを正当化しようとする勢力の露骨な狙いが見てとれる。同時に、彼らの圧力に屈し公開前の試写会開催や詳細な資料提供の便宜をはかった文化庁の対応についても、映画鑑賞の機会を奪う行為に手を貸した責任は看過できるものではない。
こうした状況に現在、多くの映画人や心ある人々が「表現の自由を守ろう」と声をあげている。私たちは映画館側には、上映を望む要望に応えて、社会的責務を果たしていくことを強く求める。
日本文学の価値ある遺産、積極的な伝統を受けつぎ、創造・批評の諸活動を通じて文学、芸術の民主的発展への寄与を目的としている私たちは、中止をめぐる圧力に怒りをもって抗議すると共に、広範な世論の喚起により、「靖国 YASUKUNI」の上映を実現させていくことを呼びかけるものである。
2008年4月5日
日本民主主義文学会常任幹事会
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