2008年4月1 日
文化庁長官 青木保殿
全国労働組合総連合
議長 坂内三夫
映画演劇労働組合連合会
中央執行委員長 高橋邦夫
映画「靖国」に関する申し入れ書
表題の件につきましては、既に本年3月19日付で映演労連から同主旨の申し入れをおこない、回答をお待ちしているところです。しかしながら、事態は「靖国」上映予定館の全てが公開直前になって中止を表明するという最悪の状況を迎えています。改めて、全労連ならびに映演労連として共同の申し入れを行いますので、早急なご回答をお願いいたします。
ことの発端は、自民党・稲田朋美衆院議員らによる、助成が適切だったかどうかを検証するための「試写会」の「要請」でした。国会議員向け試写会は、貴庁の手引きで3月12日に行われたと報じられていますが、貴庁が与党議員の圧力に押されて「試写会」を手引きしたことを、私たちは大変遺憾に思います。
稲田議員は、「ある種のイデオロギーをもった映画に公的基金から助成するのは相応しくない」旨の発言をし、芸術文化振興基金からの助成取り消しを求めている、とも伝えられています。また、その後の国会質問でも与党議員から「審査員の個人的思想信条を問う」などの、同種の発言が続いています。
これらの動きは、政治の介入によって憲法第21条の「言論・表現の自由」が歪められる事態であると言わざるを得ません。
わたしたちは、映画を含む日本文化の振興および表現の自由の擁護という立場に立って、以下3点について、貴庁の見解を文書でご回答いただきたく申し入れます。
1.自民党・稲田朋美衆院議員らの「要請」に応じて、貴庁が特別に「国会議員試写会」を催したことは、与党議員らによる「事前検閲」の可能性があります。今後かかることがないよう貴庁の自主性・独立性を貫く態度についてどのように措置されるか、お伺いします。
2.自民党・稲田朋美衆院議員が、「イデオロギーを持った映画」への助成取り消しを求めていることは重大です。映画が表現物として、作り手のある種の主張、メッセージ性を持つのは至極当然のことです。それを理由に芸術文化振興基金からの助成取り消しを行うことは絶対に許されません。報道によれば貴庁は「助成は審査をクリアして適正になされたもの」と答えているようですが、今後とも政治的介入を排除し、「イデオロギー」を理由にして公的支援を認めないなどということのないよう公正行政をどのように担保するか、お伺いします。
3.映画「靖国」の上映中止により、国民が政治的立場の違いを超えて視聴する機会が奪われることは、日本の映画文化の創造と普及および芸術文化の振興にとっても大変不幸な出来事です。貴庁はこの点についてどのような見解をもっているか、明らかにされるようお願いします。
以上
|