2008年3月19日

文化庁長官 青木保殿

映画演劇労働組合連合会  
中央執行委員長 高橋邦夫

映画「靖国」に関する申し入れ書

 靖国神社をテーマにしたドキュメンタリー映画「靖国YASUKUNI」(李纓監督)が3月18日、一部映画館で上映とりやめになったと報じられました。
 ことの発端は、自民党・稲田朋美衆院議員らによる、助成が適切だったかどうかを検証するための「試写会」の「要請」でした。国会議員向け試写会は、貴庁の手引きで3月12日に行われたと報じられていますが、貴庁が与党議員の圧力に押されて「試写会」を手引きしたことを、私たちは大変遺憾に思います。
 また稲田議員は、「ある種のイデオロギーをもった映画に公的基金から助成するのは相応しくない」旨の発言をし、芸術文化振興基金からの助成取り消しを求めている、とも伝えられています。
 これらの動きは、映画の表現の自由が侵されかねない重大問題であり、私たちは大きな危惧を抱かざるをえません。
 そこで、以下の2点について緊急に貴庁に説明と見解を求めたく、申し入れる次第です。ことは緊急を要しますので、至急のご検討とご返答をお願い申し上げます。

1.自民党・稲田朋美衆院議員らの「要請」に応じて、貴庁が「国会議員試写会」を手引きした経緯と理由についてご説明ください。
 また私たちには、与党議員らによる事前試写会の強要は、国政調査権を盾にした権力者の「検閲」、公的支援への政治的介入のように感じますし、貴庁の対応はそれに屈したかような印象を受けます。この点についての貴庁のご見解をお聞かせ下さい。

2.自民党・稲田朋美衆院議員が、「イデオロギーを持った映画」への助成取り消しを求めていることは重大です。映画が表現物として、作り手のある種の主張、社会へのメッセージ、イデオロギーを持つのは当然のことですが、それを理由に権力の中枢にいる国会議員らが公的助成取り消しを求めるなどということは、絶対に許されてはならないことです。もしこんなことがまかり通れば、社会的、政治的テーマとメッセージを持つ映画は、公的支援を受けられずにたちまち苦境に陥ってしまいます。
 ことは文化への公的支援の根幹にかかわる問題です。報道では、貴庁は「助成は審査をクリアして適正になされたもの」と答えているようですが、この見解に変更がないかどうか、改めてお聞かせ下さい。
 また、助成を取り消せとの要請に今後どう対応するつもりか、公的支援への政治的介入をどう排除するのか、貴庁の姿勢とお考えをお聞かせ下さい。

以上

 


映画演劇労働組合連合会(映演労連)http://www.ei-en.net/